●啓蟄(けいちつ)
陽気地中にうごきちぢまる虫あなをひらき出ればなり
No.119
おばあちゃんと蓬摘み
「おらが世やそこらの草も餅になる」(一茶)川の堤や野道に柔らかい若葉を出し春を告げる蓬。最近でもちょっと郊外へ出れば、おばあちゃんと孫が蓬摘みを楽しんでいる光景に時々巡り合えます。摘んだ蓬は蓬餅にし、小豆餡や黄粉をまぶしたり、小豆餡を包んだり。これぞ健康の元です。
女心を知らない人に
蓬の葉は食べて良し、据えて良し。実は成長した蓬の葉はお灸の艾になります。蓬莱山、蓬が島は不老不死の霊山、神島のこと。草餅(蓬餅)の蓬は春の七草の御行、即ち母子草の代用とか。草餅を母子餅とも。奈良の室生寺辺りに弘法大師が蓬を植えたとの伝説があるから蓬が活用され始めたのはそう新しい話ではないでしょう。蓬餅は蓬そのものが又は餡の小豆や黄粉の大豆と合体して霊力を発揮すると考えられたのか、遠方から訪れた人々の健康を気付かってか、門前や峠 の茶屋によく似合う。柴又葛飾帝釈天門前の寅屋のおいちゃんがブツブツ寅さんの小言を言いながら名物草団子(蓬餅)に小豆餡を塗っている。そこへ寅さんが風の如く帰って来て恋の騒動を起こす。寅さんの好物は芋の煮っころがしと熱燗。甘いものは余り好まなかったようです。性格は直情型。時には程良く甘い蓬餅を食べれば女心も理解できた筈。蓬餅は婆、母、姉の味わいがある。