●大寒(だいかん)
ひゆることのいたりてはなはだしきときなればなり
No.140
白い雪に赤い小豆飯
平家の落人が住んだという兵庫県城崎郡香住町餘部字御崎。日本海に突き出た御崎の突端、滑り落ちそうな急斜面に建つ家々が軒を寄せ合い、厳寒の中、吹きつける潮風に耐えている。1月28日、白い雪の季節、平家の赤旗と赤い小豆飯が登場する儀式が始まる。
百手の儀式
雪に包まれた平内神社。下を見下ろせば荒波踊る日本海。御崎の村がある場所は余りにも急斜面であるために、御崎の頂上近くにある神社からでも家々の屋根は見え難い。儀式が始まる前、一人のお年寄りと若い娘さんが重箱を持ってやってくると、石の鳥居や石灯籠など境内のあらゆる石造物に重箱の中の小豆飯を少しずつ供え、それぞれに手を合わせて帰っていく。しばらくすると、海から吹き上げる風にはためく平家の赤旗の間を縫うように、村の下から裃姿の人々を交えた行列が急坂の雪を踏みしめながら登ってくる。人々は手に手に鮑の貝殻を持っている。鮑の貝殻の中には赤い小豆飯。やがて行列は神殿へ進み、熊笹の幹を箸にして小豆飯を神前に供える。そして、百手の儀式が始まる。人々は弓を張り、的を目掛けて次々に矢を打ち込む。儀式が終ると真冬の日本海に夜の帳が下りる。