●春分(しゅんぶん)
日天の中を行て昼夜とうぶんの時なり
No.144
小豆ご飯のヌクヌクに
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の在野の歌人が「小豆ご飯のヌクヌクに ホシカを食べるその時に」と詠っています。ホシカとは干した鰯のことです。あぶりたて潮の香りのホシカとヌクヌク小豆ご飯・・・・・・読むだけで口の中が酸っぱくなる、旨くて上手い結構な詩です。
小豆の麦ご飯
宮本常一という民俗学者がいました。昭和15年以降、足にゲートルを巻き、リュックサックを背負い、農山漁村の民家に宿を請いながら、生きた民族を調査しました。その頃の様子を、1980年の講演で次のように喋りました。・・・・・・戦前、日本の地方では米は誠に貴重であった。九州の調査中に泊まった民家では数日間猪の肉ばかり食べさせられた。徳島県の或る村では、里芋や豆腐の田楽や凍り豆腐を食べて「旨い!」と言うとそればかりが出る。更に家の人が「折角ここまで来たのだから」と稗と麦のご飯が出た。一週間も同じものばかりでは辟易するので「他にはありませんか?」と言うと、小豆と麦が半々のご飯が出た。地方には米はない。稗と麦のご飯の炊き立ては旨いが冷めると喉を通らない。お茶をかけてどうにか食べた。・・・・・・小豆の麦ご飯も稗と麦のご飯と同じだったのでしょう。