●清明(せいめい)
万物はっして清浄明潔なればこの芽は何の草としるる
No.145
野良小豆
地方へ行くと地の小豆に出会えることがあります。中には完全な栽培小豆ではなく野生種との中間種の小豆も残っているところもあるようです。よく野良小豆などと呼ばれていますが、高知県土佐郡本川村高薮のそれはなあさという珍しい名前で、黒く小粒のなあさは赤飯小豆飯には欠かせません。
小豆は富・小豆は愛
なあさの名前の由来は、畑でなあさを育てておられる80半ばの物知りの神職さんも残念ながらご存知ではありませんでした。しかしこの神職さんから貴重な話を聞くことができました。なあさは昔の本川では富の象徴だった。そういえば本川には神楽が伝承され、その中で男性が女性に求愛する演目がありますが、それは以前、小豆を見せることが究極の求愛の行為に位置付けられ、女性は小豆を見て男性と仲良くなるというストーリーであったそうです。ところで本川村の寺川という在所の江戸時代の或る一年間の庶民の生活を記録した「寺川郷談」という大変貴重な文献がありますが、それにはお嫁さんにしたい女性の家に仲人が小豆二升を麻袋に入れて持参し、女性が袋の中身が小豆であることを確かめてから縁談話を進めるという風習がちゃんと記録してあります。本川村は険しい山里で稲作ができないので小豆はお米の代わりでもあったのでしょう。本川の人々は小豆に愛と未来を託してきたのです。